七仏通戒偈を読む。悪を避ける、その次の二句へ
「悪いことをしてはいけない」。七仏通戒偈の最初の句は、すぐに意味をつかめます。そのため、次の句を同じような教訓だと思って、通り過ぎてしまうことがあります。
四句は、悪を避けること、善を実行すること、自分の心を浄めることへと進みます。してはいけない行為だけを見ると、この短い偈が向ける視線の半分ほどを見落としてしまいます。
四句を、動きの違いに注意して読む
新纂浄土宗大辞典の七仏通戒偈には、次の形が載っています。意訳は、一句ごとの働きが分かるように記しました。
四句の本文・読み・大意
| 本文 | 読み | 大意 |
|---|---|---|
| 諸悪莫作 | しょあくまくさ | もろもろの悪を行わない |
| 衆善奉行 | しゅぜんぶぎょう | さまざまな善を実行する |
| 自浄其意 | じじょうごい | 自らの心を浄める |
| 是諸仏教 | ぜしょぶっきょう | これが諸仏の教えである |
一行目は行為を止める言葉、二行目は行う言葉です。三行目では、その行いをする自分の心にも目を向けます。最後の句が、ここまでの教えを一つに結んでいます。
経本によっては、二行目が「諸善奉行」となります。天台宗の教えの紹介もこの表記です。一文字が違っていても、そこで説かれるのは善を励んで行うことです。手元の経本を、別の表記を見つけたという理由だけで書き直す必要はありません。
七仏という名に込められた広がり
七仏とは、釈迦と、それ以前の六仏を合わせた過去七仏のことです。七仏通戒偈は、それらの仏に共通する教えをまとめたものとして受け継がれています。題名は、七種類の禁止事項が並ぶ、という意味ではありません。
浄土宗の辞典は、この七仏に、時代を超えて通じる仏教の真理が表されていると説明します。一人のための、その場限りの注意よりも広い言葉として、この偈が伝えられてきたことが分かります。
悪を止めた後に、できる善が残る
「諸悪莫作」だけを読むと、何もしなければ悪も起こさずに済む、と考えたくなるかもしれません。ところが、次には善を実行する句があります。手を出さずにいることと、相手のために必要なことをすることは、別の問いになります。
日常に引き寄せるなら、誰かの失敗を広める話に加わらないことが、まず一つあります。そのうえで、誤った情報が伝わっているなら事実を訂正する、困っている作業があるなら手を貸す、といった行いを考えられます。これは四句を暮らしの中で読むための例です。
善をしたつもりでも、相手の必要に合わないことはあります。引き受けられる範囲を伝え、求められている手助けを聞く。善を実行するという言葉は、相手を見ずに自分の善意を押し通すより、何が助けになるかを考えるところから始められます。
「自浄其意」で、自分の動機も見直す
同じ手助けでも、感謝されなかったときに強く腹が立つことがあります。そのとき、善い行いの中に、認めてほしいという期待が混じっていたことに気づくかもしれません。三句目を読むと、外から見える行為に加えて、その行為を動かす心も問い直せます。
ここで、心を浄めるという言葉を、嫌な感情を人に見せないことだけに縮めないようにしたいところです。天台宗の解説は、欲にとらわれず、智慧に基づいて苦を離れる教えと結びつけています。整った見た目よりも、貪りや憎しみに動かされるあり方を、教えに照らして見ていくことが関わります。
法句経の前後を読むと、修行の輪郭が見える
この四句に対応する内容は、パーリ語の『ダンマパダ』第183偈にもあります。ターニサロ比丘の英訳では、続く第184・185偈も一緒に読むことができます。
その続きでは、忍耐、涅槃、人を傷つけないこと、戒による慎み、食事の節度、静かな住まい、心を高める修行が語られます。四句を前後から読むと、行為を慎むことと心を修めることが、苦からの解放を目指す道の中に置かれていると分かります。人からよく見られる振る舞いだけが、目当てではありません。
戒を具体的に学びたいときは、たとえば一昼夜の八斎戒のように、何をどの期間守る修行なのかを知る入口もあります。七仏通戒偈の大きな方向と、個々の戒の内容を、行き来しながら学べます。
お勤めに出てきたら、一句を持ち帰る
天台宗の檀信徒のお勤めの案内には、七仏通戒偈が勤行の一部として載っています。実際に唱えるときは、その場の経本と先導する声に合わせます。宗派や寺院によってお勤めの構成は違うため、短い偈だからと独自に順番へ加える前に、使っている勤行の流れを確かめます。
家での夕方のお勤めでこの偈を読んだなら、唱え終えてから一日を思い返せます。止められた悪い行いはあったか。まだできる善は何か。その行いの奥に、どんな期待があったか。毎回三つとも答えを出さなくても、一句が具体的な出来事に結びつけば、次に唱える言葉にも違った重みが出てきます。
よくある質問
七仏通戒偈は、何と読みますか?
しちぶつつうかいげ、と読みます。釈迦を含む過去七仏に通じる教えをまとめた偈として伝えられ、悪を避け、善を行い、自らの心を浄めることを説きます。
「衆善奉行」と「諸善奉行」は、どちらが正しいですか?
どちらも伝わる表記です。新纂浄土宗大辞典は「衆善奉行」を掲げ、漢訳の法句経などには「諸善奉行」があると説明しています。天台宗公式の教えのページも「諸善奉行」です。お勤めでは、その寺の経本に合わせます。
七仏通戒偈を唱えれば、戒を受けたことになりますか?
偈を読誦して意味を学ぶことと、宗派の儀礼として授戒を受けることは区別されます。この四句だけで授戒の手続きを代えられる、という共通規則はありません。授戒を望む場合は、所属する寺院に相談します。