日本語に慣れていない家族と、法事に参列する
家族の法事に、日本語に慣れていない配偶者や親族も来ることになった。服装と集合時刻は伝えたけれど、お堂で何が始まるのかをどう説明すればよいか、迷うことがあります。
最初に用意したいのは、経文の全訳より、当日の流れと本人に関わる場面の説明です。誰を偲ぶ集まりなのか、どこで待ち、いつ席を立つのか。家族が知っているつもりで省く部分から、一緒に確かめていけます。
まず、本人が知りたいことを聞く
説明を英語で用意する前に、何語なら読みやすいか、話なら何語がよいかを本人へ尋ねます。日本語で仕事をしていても、法事の言葉にはなじみがないかもしれません。反対に、寺院の儀礼には詳しく、経本だけ読みにくいという場合もあるでしょう。
「初めてだから全部教えなければ」と家族が話し続けると、本人の質問を聞く時間がなくなります。故人との関係や、これまで葬儀に出たことがあるかも、知っている範囲は人によって違います。聞きたいことを先に挙げてもらえば、当日の説明係も準備する内容を絞れます。
国の『やさしい日本語ガイドライン・話し言葉のポイント』は、相手を子供扱いせず、反応に合わせて話し方を変えることを挙げています。短く話しても伝わりにくければ、通訳など別の手段へ切り替える考え方です。法事でも、日本語をゆっくり繰り返せば十分とは決めずに話せます。
英語の寺院案内は、宗派を確かめて使う
築地本願寺の英語案内には、本堂での焼香や合掌、念仏の説明があります。動作だけでなく、阿弥陀仏にまかせるという念仏の意味も示されています。英語で儀礼を知りたい家族には、こうした宗派自身の説明が手がかりになります。
ただし、これは浄土真宗本願寺派の寺院の案内です。別の宗派で行う法事の作法を、そのまま置き換える資料にはなりません。「仏教の葬儀」とだけ検索して見つけた説明も、どこの寺院によるものかを先に見ます。
ハワイの慈光園本願寺の英語案内は、家族の追悼法要に読経、僧侶の話、焼香があると説明しています。こうした案内は、外国語でも法要の構成を説明できる実例です。海外寺院の案内を読むことと、日本で依頼した法事の内容が決まることは分けて考えます。
手元の案内と予定が違う時は、どちらかを誤りと決めず、今回の寺院へ尋ねます。宗派の異なる夫婦が供養の方法を相談する時と同じように、家族の慣習と、依頼する寺院の儀礼が重なる範囲を確かめられます。
寺院には「どこで説明が必要か」を伝える
問い合わせでは、外国籍の人が来るという情報だけでなく、「日本語の案内が分かりにくい家族が一人います。焼香の順番と法話の内容を伝えたいです」のように、必要な部分を示せます。
僧侶が外国語で話せるか、家族が短く通訳してよいか、説明の時間を式の前後に取れるかを確認します。通訳を別に依頼するなら、誰が手配し、何を訳すのかも決めます。公開の英語法座があっても、個々の法事で同じ対応ができるとは限りません。
式次第を先に教えてもらえれば、家族用の短いメモを作れます。集合、読経、焼香、法話、移動の順を書き、本人が立つ場面に印を付けます。法事の後に墓参や食事があるなら、その行先と終了予定も別に添えられます。文章を長く訳すより、当日持ち歩いて見返せる量にします。
メモには、故人の名前の読み方や親族との関係も添えられます。「叔父」「伯父」などの漢字だけでは、誰の話か伝わらないことがあります。経文の題名は寺院に確認し、日本語の表記も残しておけば、当日配られた経本と照らし合わせられます。全文を訳して配る予定なら、使う資料と配布の範囲を寺院へ伝えておきます。
作法の説明と、参加する意思を分ける
焼香や合掌の仕方を説明したからといって、本人が同じ動作を希望しているとは限りません。自身の信仰に関わることを気にしている場合もあります。家族は、言葉が分からないために困っているのか、行為そのものについて相談したいのかを、本人の返事から確かめます。
希望が分かったら、焼香をしない場合の過ごし方や席を、寺院と相談しておけます。その場で親族全員へ事情を説明させず、必要な人にどこまで伝えてよいかも本人に聞きます。参加の仕方を、家族への愛情の深さを測る材料にしないことです。
当日は、隣で次の場面を知らせる
説明を頼まれた家族が、受付や会食の手配も一人で抱えると、肝心な時に席を外すことになります。式中に隣へ座る人と、移動の案内をする人を決めておけば、途中で担当が変わることも伝えられます。椅子席などの相談も必要なら、言語の説明と併せて座席を確かめます。
事前に相談した順番に沿って、今は聴く時間なのか、この後に焼香へ進むのかを知らせます。式の最中に長い解説を続けず、本人が後で尋ねたいことを残せるようにします。法話で分からなかった言葉は、終了後に僧侶へ確かめる方法もあります。
帰り道には、分からないまま終わった場面があったかを聞けます。次の法事の準備も、その人の答えから変えられます。
よくある質問
英語の法座がある寺院なら、家族の法事も英語で頼めますか?
公開の英語法座と、個別の法事での通訳や英語の法話は別に確認します。必要な言語、通訳してほしい部分、日程を伝え、対応できる人や時間、費用を寺院と相談してください。
日本語のお経を一緒に読めないと、参列できないのでしょうか?
読めないことを理由に、家族側で参加を諦めさせる必要はありません。読経中はどう過ごすか、声に出す部分があるかを寺院へ尋ねます。本人の希望も聞き、無理に暗記や発音の練習を課さずに準備できます。