涅槃図の見方:涅槃会でたどる釈迦と弟子たち

大きな掛け軸の中央に横たわる釈迦。その周りで泣く人、倒れる人、空から降りてくる人物。足元には、動物たちも集まっています。涅槃図は、登場するものを一つ見分けるだけで、次の場面が気になってくる絵です。

涅槃図は、お釈迦さまの入滅を描いた仏画で、涅槃会(ねはんえ)の法要に掛けられます。最初から全員の名前を覚えようとせず、中央の釈迦、周囲の弟子、上空、足元へと視線を動かしてみましょう。

涅槃会は、釈迦の最期と教えをしのぶ日

日本では2月15日を釈迦の入滅の日として、涅槃会を勤める伝統があります。京都国立博物館の涅槃図解説が紹介するように、3月15日に行う例もあります。

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涅槃という語は、単に人が亡くなることだけを意味しません。浄土宗の涅槃会の説明では、煩悩の火が消え、苦から解き放たれた境地という意味を示したうえで、釈迦の入滅をしのぶ法要を説明しています。

誕生を祝う花まつりさとりを記念する成道会と併せてみると、一年の中で釈迦の生涯をたどる機会があることが分かります。涅槃会では、教えを説いた人との別れと、その後も伝えられていく教えに目を向けます。

最初は、横たわる釈迦の姿を見る

中央の釈迦は、右脇を下にして横たわる姿で表されます。北を枕とする入滅の伝承に基づく姿です。画面での左右を、実際の方位とすぐ結びつける必要はありません。

周囲の人物が大きく身をよじっていても、釈迦の身体は静かに横たわっています。まずこの違いを見ると、絵の中にある静けさと動きが分かります。誰の表情から見始めるかで、同じ絵の印象も変わります。

寺院の涅槃図には大きな作品があります。少し離れて全体を見る時間と、細部を読む時間を分けると、人物を一人ずつ探しているだけでは気づきにくい構図が見えてきます。

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沙羅双樹の色にも、物語がある

釈迦の周りに立つ木が、沙羅双樹です。葉が茂る木と枯れた木が描き分けられている場合は、その違いに目を留められます。

臨黄ネットの沙羅双樹の解説では、入滅に際して八本のうち四本が枯れ、四本が栄えたという「四枯四栄」の伝承を紹介しています。木々も、場所を示す背景としてだけでなく、入滅を伝える図像になっているのです。

描かれた植物の種類を現代の植物図鑑だけで決めようとするより、まずその絵が伝えようとする物語を読むと分かりやすくなります。作品によって木の描き方や見え方は違うため、八本すべてを同じ形で探す必要はありません。

手前に倒れている阿難尊者

釈迦のそばで身体を伏せ、倒れるように描かれた人物が、阿難尊者であることがあります。阿難は釈迦に長く仕え、多くの教えを聞いた弟子です。

臨黄ネットの阿難の解説は、宝床の手前で、悲しみのあまりに気を失った姿として説明しています。顔立ちだけで見分けようとするより、釈迦との位置関係や、周りの人がその人物にどう関わっているかを見ると手がかりになります。

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泣いている人の多さに圧倒されたら、一人の姿から見てみる方法もあります。教えを聞き続けた弟子にとって、師との別れがどのような出来事として描かれているか。名前を知ることで、群衆の中から一人の弟子が見えてきます。

雲に乗って現れる、母の摩耶夫人

上空に、雲に乗って降りてくる女性が描かれていれば、釈迦の母である摩耶夫人の姿を探せます。摩耶夫人の図像解説では、釈迦の誕生後まもなく亡くなり、天上に生まれた母が、雲上から降りる姿として紹介されています。

ここには、人の一生の別々の場面を、一幅の絵の中に結び合わせる仏教の物語があります。地上に集まる弟子たちだけを見ると気づきにくい、母と子の関係が、上空にも描かれているのです。

神仏や天上の人物を含む涅槃図は、出来事を写し取った記録写真とは表現の仕方が違います。伝承を絵にしたものとして見ると、なぜその人物がそこにいるのかを、絵の物語に沿ってたどれます。

動物と人々を、公式の絵解きで確かめる

足元に集まる動物にも、さまざまな姿があります。種や数は作品によって異なり、どの涅槃図にも同じ動物がそろうとは限りません。まず見つけやすい一匹から、体の向きや表情を見ていけます。

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家でじっくり見るなら、臨黄ネットの「WEB版 絵解き涅槃図」が手がかりになります。妙心寺派教化センター、花園大学、禅文化研究所が協力したもので、三重の中山寺と岐阜の少林寺に伝わる二幅から、人物や動物の解説へ進めます。

一幅で覚えた配置を、別の絵にもそのまま当てはめるより、「こちらではどこに描かれているか」と見比べるほうが、作品ごとの違いも楽しめます。

法要の日と、絵を見られる期間を分けて調べる

参拝前には、涅槃会の開催日と、涅槃図の公開期間を別々に見ます。法要だけに掛けるのか、別の日にも拝観できるのかで、訪れる日が変わります。公開場所、拝観の受付、撮影の可否なども、その寺院の案内に従います。

年中行事カレンダーで涅槃会の時期を知ったら、次は一つの寺院、一幅の絵に絞って調べてみる。法話や絵解きを聞ける機会なら、見分けられなかった人物を尋ねることもできます。

帰宅してから公式の絵解きを開くと、現地で気づかなかった小さな姿が目に入るかもしれません。大きな絵の前で覚えた一人の名前が、釈迦の生涯と教えを知る、次の入口になります。

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よくある質問

涅槃会はいつ行われますか?

日本では2月15日に勤める伝統があり、3月15日に行う寺院もあります。法要の日と、涅槃図を一般に公開する期間は同じとは限らないので、参拝先の当年の案内を見ます。

涅槃図で、釈迦の前に倒れている人は誰ですか?

阿難尊者として描かれる人物がいます。釈迦に仕え、多くの教えを聞いた弟子で、別れの悲しみを強く表した姿です。人物の配置や表現には作品ごとの差があるため、その絵の解説と照らし合わせます。

涅槃は、人が亡くなること全般を指しますか?

涅槃は本来、煩悩の火が消えたさとりの境地を表す仏教語です。涅槃会では、釈迦が生涯を閉じ、入滅したことをしのびます。一般の死をすべて同じ意味で涅槃と呼ぶわけではありません。

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