五百羅漢とは?お寺に並ぶ大勢の像の見方

お堂いっぱいに並ぶ像を前にすると、数の多さがまず目に入ります。けれど、一体の前で足を止めてみると、隣の像との違いが気になってきます。この人たちは、何をした人たちなのでしょうか。

五百羅漢は、釈迦の教えに従って修行し、煩悩を離れた弟子たちを表す群像です。その意味を知ってから眺めると、大勢の人が並ぶ景色に、教えを聞き、伝えてきた人々の姿が重なります。

羅漢という呼び名は、修行の到達を表す

羅漢は「阿羅漢(あらかん)」を縮めた呼び名です。目黒・五百羅漢寺の説明では、修行によって煩悩を払い、智慧を完成した聖者とされています。単に年老いた僧や、変わった表情の人を指す名前ではありません。

広告

同寺は、釈迦の入滅に際して集まった五百人の弟子を、五百羅漢のモデルとする伝承を紹介しています。そこには、師が亡くなった後も、聞いた教えを人々に伝えていく役割があります。

涅槃図に描かれた弟子たちを見たことがあれば、師との別れを描く絵と、教えを受け継ぐ聖者の群像とを、続けて考えられます。五百羅漢という題材には、釈迦一人の生涯から、その後の仏教へ視野を広げる入口があります。

五百体あるかどうかより、まず寺の由緒へ

「五百」という名と、いま目の前にある像の数は、必ずしも一致しません。失われた像がある場合、別の場所で保存される場合、公開範囲が限られる場合など、数を確かめるには、その寺の来歴が必要です。

たとえば五百羅漢寺の文化財一覧は、群像を計305体と記載しています。ただし、305体すべてが羅漢像という内訳ではありません。釈迦如来や菩薩などの諸尊も含まれ、五百羅漢坐像の項目は287体です。同じ案内に出てくる数字でも、何を合計したものかで意味が変わります。

この寺の木像を作ったのは、江戸時代の松雲元慶です。像には、釈迦の時代の弟子を慕う信仰と、後の時代にそれを形にした人の仕事が重なっています。一体ずつを見る前に、作者、制作時期、移転や保存の経緯を読んでおくと、その場に残った像の見え方も変わります。

広告

お堂の木像、境内の像、百幅の絵

五百羅漢は、屋内に並ぶ木像だけで表されるわけではありません。浜松・方広寺の境内案内では、半僧杉の向かいに並ぶ羅漢や、本堂裏の「らかんの庭」が紹介されています。同じ境内でも複数の場所に像があり、お堂を一室見ればすべて終わる、という配置ではありません。

絵画の例が、増上寺に伝わる狩野一信の五百羅漢図です。江戸末期に描かれた全百幅の作品で、各幅におよそ五人ずつ、全体で五百羅漢が表されます。ひとつの画面に五百人が詰め込まれた絵を想像していた人には、百幅にわたる広がりが新鮮に感じられるでしょう。所蔵品の紹介と、その日に見られる展示は分けて確認します。

一人の名前から、周りの姿へ

拝観中は、最初から全員を見分けようとしなくてもかまいません。名前の札や解説が付いていれば、一体を選び、その像の姿と説明を照らし合わせます。何を持つか、誰のほうを向くか、近くの像とどんな関係に置かれるか。視線を少しずつ広げていけます。

その名前と、彫られた顔立ちは、別々の手がかりです。寺院の解説を読みながら、伝承上の人物と、作品としての表現の両方を見ていくと、一つの仕草から性格や生涯を決めつけずに楽しめます。仏像の手の形を読むときと同じく、姿だけで分からないことは、その像の尊名や由緒と組み合わせます。

広告

十六羅漢というまとまりに出会うこともあります。増上寺の文化財案内にも、十六羅漢像が紹介されています。「羅漢」という同じ呼び名でも、五百羅漢とは異なる組として伝わるものです。人数の違いが気になったら、まず目の前の作品がどのまとまりを表すのかを知ると、説明を追いやすくなります。

拝観の前に、撮影と歩く範囲を確かめる

像をゆっくり見たい日でも、寺院では法要が行われています。五百羅漢寺の拝観のお願いには、本堂が法要中の場合は窓越しの拝観となり、終了後に堂内へ入れることが示されています。また、仏像の撮影は禁止されています。写真を残せない場合は、参拝後に覚えている尊名や気になった姿を短く書き留める方法があります。

屋外に広がる羅漢を見るなら、歩く経路も一緒に調べます。方広寺の案内には上り坂のある道が記され、目黒の五百羅漢寺も境内の段差や階段を説明しています。見たい像のある場所まで行けるかを先に確かめると、当日の時間と体力に合わせて拝観範囲を決められます。

大勢の像を数え終えることより、一体の前で知った名前が、帰ってからも残ることがあります。その名前から教えや寺の歴史を調べてみれば、次のお参りで立ち止まりたい場所が、もう一つ増えていきます。

広告

よくある質問

五百羅漢は、お釈迦さまと同じ仏を五百体並べたものですか?

釈迦の教えを学び、修行によって煩悩を離れた弟子たちを表す群像です。羅漢は阿羅漢の略で、釈迦そのものを五百回表したものではありません。

五百羅漢なら、どのお寺にも五百体ありますか?

現在残る像の数や、公開されている数は寺院によって異なります。目黒の五百羅漢寺も、公式の文化財一覧では諸尊を含む群像が計305体、そのうち五百羅漢坐像は287体とされています。

羅漢像は写真を撮ってもよいですか?

寺院ごとに規則が違います。目黒の五百羅漢寺では、仏像の撮影は固く禁じられています。屋外の像でも撮影できるとは限らないため、拝観案内と現地の表示に従います。

記事をシェアして、功徳を積みましょう