得度式とは何をするのか?出家の儀式で受け取るもの・誓うこと

カテゴリ: 儀礼・風習

時代劇で、ある人物が出家を決意して頭を剃る場面を見たことがあるかもしれません。あの「剃髪」は出家の象徴として広く知られていますが、実際に仏教の出家がどんな手順で行われるかを知っている人は多くないでしょう。

現代の日本で僧侶になるとき、最初に通過するのが得度式(とくどしき)です。この儀式では何が起き、出家する人は何を手にし、何を誓うのか。あまり表に出てこない出家の入り口を整理します。

得度とは何か

「得度」の「度」は「渡る」を意味します。迷いの世界(此岸)から悟りの世界(彼岸)へ渡ること。その渡りを「得る」から得度です。

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仏教の起源にさかのぼれば、釈迦(シッダールタ)が王宮を出て修行者になったことが最初の「出家」でした。以来2500年、仏教では在家(一般の生活)を離れて仏道に専心する生き方を出家と呼び、その第一歩を刻む儀式が得度式です。

日本の各宗派はそれぞれの制度で得度を定めています。曹洞宗では「得度」、浄土宗では「得度」あるいは「出家得度」、浄土真宗では「得度」もしくは「おかみそり」と呼ぶことがあります。真言宗では「入壇灌頂」が出家の核となる儀式です。呼び名や作法は違っても、仏弟子として生きる決意を師の前で表明し、戒を受けるという構造は共通しています。

得度式の流れ

宗派によって細部は異なりますが、曹洞宗の得度式をもとに、おおまかな流れを整理します。

まず剃髪(ていはつ)。師僧(師匠となる住職)が剃刀を手に取り、得度を受ける人の髪を剃ります。全頭を剃る場合もあれば、象徴的に一束を剃る場合もあります。この瞬間が、世俗の生活から仏道への「切り替え」を身体で表す儀式です。

次に授戒(じゅかい)。師僧の前でを受けます。曹洞宗の場合は十六条戒(三帰戒・三聚浄戒・十重禁戒)が授けられます。戒とは「守らなければ罰を受ける規則」ではなく、「仏弟子としてこう生きる」という自発的な誓いです。

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授戒の証として戒名(法名)が授けられます。これが仏弟子としての名前になります。

そして法衣と袈裟の授与。黒い法衣(着物)と、その上に掛ける袈裟を師僧から受け取ります。袈裟はもともとインドで端切れを縫い合わせた修行着でした。曹洞宗では応量器(おうりょうき:修行中に使う食器一式)も授けられます。

これらの一連の儀式を経て、得度を受けた人は正式に僧侶としての歩みを始めます。

血脈とは何か

得度式で授けられるものの中に、血脈(けちみゃく)があります。聞き慣れない言葉かもしれません。

血脈とは、釈迦から歴代の祖師を経て、自分の師僧、そして自分へと続く法の系譜を朱色の線でつないだ巻物です。「血」は血統のように途切れることのない継承を意味し、「脈」は脈打つように生きた教えが流れ続けていることを意味します。

法脈という言葉が仏教の大きな流れ(インドから中国、日本へと伝わった教えの系統)を指すのに対し、血脈はもっと具体的です。巻物の上に名前がつらなり、朱の線で一本につながっている。自分が「仏の家系」に入ったことを目に見える形で証明する文書です。

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曹洞宗では得度式と授戒会の両方で血脈が授けられます。出家者だけでなく、在家信徒が授戒会で戒を受けた際にも血脈が渡されることがあります。目の前に広げたとき、2500年分の名前が自分のところまでつながっているのを見て、仏教が「生きた系譜」であることを実感したという話を聞くことがあります。

在家の人が得度を考えるとき

「僧侶になりたい」と考える人のすべてが、寺の後継者というわけではありません。社会人として働いてきた人が人生の転機に出家を志すケースは、古くからあります。

現代の日本で得度を受けるには、いくつかの道があります。

最も一般的なのは特定の寺院の住職に師事する方法です。まず師僧(弟子を取ってくれる住職)を見つけ、一定期間の修行や勉強を経て得度式に臨みます。その後、本山や専門道場での研修が求められる宗派もあります。曹洞宗の場合は駒澤大学や各僧堂での安居(あんご:集中修行)が必要です。

宗派によっては在家得度という形もあります。頭を剃らず、日常生活を送りながら仏弟子としての戒を受ける形です。浄土真宗では在家と出家の区別がもともと薄く、得度は「本願に生きる自覚を持つ」ことに重点が置かれています。

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いずれの場合も、得度は「試験に合格してゴールする」ものではありません。鑑真が命をかけて日本に戒律の制度を持ち込んだのは、戒を受けることが仏弟子の出発点であり、そこから先の修行こそが本題だと考えたからです。得度式が終わった翌日から、本当の意味での仏道が始まります。

始まりの一歩

得度式は華やかな晴れ舞台ではありません。本堂で師の前にひざまずき、髪を剃り、戒を受け、名前をもらう。静かな、しかし重い一日です。

その一日を経て渡されるのは、袈裟と血脈と、これから先を自分の足で歩くという約束です。世俗を離れても離れなくても、仏教の出発点は同じところにあります。「渡る」と決めた瞬間に、得度はすでに始まっています。

よくある質問

得度式にかかる費用はどのくらいですか?

宗派や寺院によって幅がありますが、得度式そのものの費用(法衣・袈裟・応量器などの道具代、戒名料を含む)はおおむね数万円から十数万円程度です。本山での研修や安居(あんご)が義務づけられている宗派では、研修費や滞在費が別途かかります。事前に師僧となる住職に確認するのが確実です。

公開日: 2026-03-30最終更新: 2026-03-30
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