授戒会とは何か?在家で「戒を受ける」意味と参加の流れ

カテゴリ: 儀礼・風習

お寺の掲示板や案内状で「授戒会(じゅかいえ)」という言葉を目にすることがあります。法事でもなく、法話の会でもない。けれど参加者は本堂に集まり、静かで厳粛な空気の中で何かを受け取って帰っていく。

授戒会は、在家の仏教徒が正式に「戒」を受ける法会です。出家者の儀式である得度式とは違い、頭を剃る必要はなく、日常の生活はそのまま続けます。それでもこの儀式を通過すると、仏教との関わり方が一つ変わります。

授戒会と得度式の違い

得度式が「僧侶になるための儀式」であるのに対し、授戒会は「在家のまま仏弟子になるための儀式」です。

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どちらも戒を受けるという点では同じですが、目的と対象が異なります。得度式は出家者(僧侶を志す人)が師僧のもとで行う個別の儀式で、剃髪と法衣の授与を伴います。授戒会は在家信徒を対象とした公開の法会で、数十人から数百人が一緒に戒を受けます。

得度式と授戒会の違い

得度式授戒会
対象出家者(僧侶になる人)在家信徒
剃髪ありなし
法衣・袈裟授与される絡子(らくす)等が授けられることがある
戒の内容宗派の出家戒三帰戒・五戒・菩薩戒など
血脈授与される授与される(宗派による)
日数通常1日1日から数日間

授戒会では何をするのか

宗派によって形式は異なりますが、曹洞宗の授戒会を中心に、一般的な流れを整理します。

授戒会は多くの場合数日間にわたって行われます。短いもので一日完結、本格的なものでは三日から五日間、寺院に通って(あるいは泊まり込んで)法話を聞き、作法を学び、最終日に戒を受けます。

まず懺悔(さんげ)。過去の行いを悔い改め、心を清める時間です。仏教の懺悔は誰かに許しを乞うものではなく、自分の内側にある曇りを認めて手放す実践です。

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次に三帰依(さんきえ)。仏(ブッダ)、法(教え)、僧(仏道を歩む仲間)の三つに帰依することを宣言します。これが仏弟子としての最も基本的な表明です。

そして授戒。戒師(授戒会を導く高僧)から戒が授けられます。曹洞宗の場合は十六条戒が中心です。三帰戒、三聚浄戒(摂律儀戒・摂善法戒・摂衆生戒)、十重禁戒。五戒をはじめとする具体的な誓いが、この中に含まれています。

戒を受けた証として戒名が授けられ、宗派によっては血脈(釈迦からの法の系譜を記した巻物)も渡されます。

戒を受けると何が変わるのか

授戒会を終えたからといって、日常生活がいきなり変わるわけではありません。翌日も同じように仕事に行き、同じ食事を取り、同じ生活を続けます。

では何が変わるのか。

変わるのは「自分と仏教の関係」への自覚です。授戒を受ける前は、仏教は外から眺めるものでした。法事で手を合わせる、本を読む、寺を訪れる。いずれも「仏教に触れる」行為です。授戒を経ると、「仏教の中に立つ」感覚が生まれます。

戒は「守らなければ罰を受けるルール」ではありません。不殺生、不偸盗、不妄語。これらは外から課される禁止事項ではなく、「こう生きたい」という自分自身の方向性を言葉にしたものです。授戒会はその方向性を、師の前で、仏の前で、声に出して宣言する場です。

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日本では葬儀の際に故人に戒名を授けることが一般的ですが、本来の戒名は生きているうちに受けるものです。授戒会で戒名を受けるということは、生前に自分の仏弟子としての名前を持つということでもあります。

授戒会に参加するには

授戒会は各宗派の本山や、地方の拠点寺院で定期的に開催されています。

曹洞宗では全国各地の寺院で年に一度から数年に一度の頻度で行われ、本山(永平寺・總持寺)でも定期的に開かれています。浄土宗では「授戒会」「五重相伝」などの形で実施されます。真言宗では「結縁灌頂(けちえんかんじょう)」が在家向けの授戒に近い意味を持ちます。

参加を希望する場合は、まず自分の宗派の寺院や本山に問い合わせるのが確実です。菩提寺がある方はその住職に相談すれば、近くの授戒会を紹介してもらえることが多いでしょう。特定の宗派に属していない場合でも、宗派を問わず受け入れている授戒会もあります。

費用は宗派・寺院によって幅がありますが、数千円から数万円程度が一般的です。泊まり込みの場合は宿泊費と食費が加わります。

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法脈の流れをたどってみると、2500年前にインドで始まった「戒を受ける」という行為が、形を変えながら現代の日本にまで続いていることがわかります。授戒会はその長い連鎖の中に、自分の名前を加える瞬間です。

「受ける」と「守る」のあいだ

授戒会で戒を「受けた」あと、それを日々「守れるか」と問われると、正直なところ自信がない。そう感じる人もいるかもしれません。

仏教は、戒を完璧に守り続けることよりも、破ったときにもう一度立ち戻ろうとする姿勢を大切にしています。戒を受けた事実は消えません。日常の中でふと立ち止まり、「自分はどう生きたいと誓ったのか」を思い出す。その瞬間に、授戒会で手を合わせたときの空気がよみがえります。

完璧であることが目的ではなく、方向を持っていることが力になる。授戒会は、その方向を一度はっきりと定める機会です。

よくある質問

授戒会に参加するのに条件はありますか?

宗派や寺院によって多少の違いはありますが、特別な条件は一般的にありません。仏教の知識がなくても参加できます。曹洞宗の授戒会では事前説明会が設けられることが多く、初めての方でも安心して臨める体制が整っています。年齢制限もほぼなく、子どもが受戒するケースもあります。

公開日: 2026-03-31最終更新: 2026-03-31
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