両界曼荼羅の見方:胎蔵と金剛界、二幅を並べる意味

壁に掛けられた二幅の曼荼羅。一方は中心の花から広がるように仏たちが並び、もう一方は九つの区画に分かれています。細かな名前をすべて覚える前に、この全体の違いから見始めることができます。

両界曼荼羅は、胎蔵曼荼羅と金剛界曼荼羅を一対にして、密教の世界を表したものです。どちらにも大日如来が描かれますが、配置や見せ方が異なります。二幅を並べることで、慈悲と智慧の働きを重ねて伝えています。

二幅の背後には、二つの経典がある

香川県立ミュージアムの作品解説は、両界曼荼羅を『大日経』と『金剛頂経』の教えを視覚化したものと説明しています。胎蔵は『大日経』、金剛界は『金剛頂経』の系統に関わります。

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仏の姿や配置には、修行と儀礼の背景があります。同館が所蔵する室町時代の作品は、木版の印刷をもとに彩色した二幅一対です。描かれた尊像を見るとともに、絵が何に使われ、どう伝えられてきたかにも目を向けると、曼荼羅が信仰を支えてきた道具でもあると分かります。

胎蔵は、中心の蓮の花から見る

金剛院が公開する胎蔵界曼荼羅では、中央に八枚の花びらを持つ蓮の形があり、その中心と花びらに仏たちが描かれています。まずここを見つけると、多くの尊像が並ぶ画面の中でも、視線の出発点を定められます。

中心の大日如来から周囲へ視線を移すと、花を囲む四角い区画や、さらに外側へ連なる尊像が見えます。最初から数を数え切ろうとせず、中央、周囲、外側という順で見渡すと、画面のつくりをつかみやすくなります。

金剛院の説明は、胎蔵を慈悲の広がる世界として紹介しています。一尊だけが孤立しているのではなく、多くの仏たちが関わりあって一つの世界を形づくる。その広がりを、配置から受けとめられます。なお、案内では「胎蔵界曼荼羅」と「胎蔵曼荼羅」の両方の名称を見かけます。

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金剛界の九つの区画は、それぞれ一つの場

同じページの金剛界曼荼羅は、縦横三つずつ、九つに区切られています。これが九会(くえ)曼荼羅です。「会」は、仏たちの集まる場を表します。区画ごとに仏の数や組み合わせが変わり、同じ絵を九回並べたものとは違う構成です。

見始めの手がかりになるのは、上段中央の大きな大日如来です。その後で、画面全体の中央にある区画を見てみます。こちらには複数の円と、その中の尊像が描かれています。上段中央の一尊と、画面中央の一つの会を区別すると、解説に出てくる「中央」という言葉にも迷いにくくなります。大日如来は、この一か所だけに描かれるわけではありません。

九つの会には、それぞれ詳しい教えがあります。初めて見るときは、一つの会を選び、仏の姿がどのように配置されているかを追う程度でも十分な入口になります。細かな印や持ち物まで知りたくなったら、印相の見方と図録の解説をあわせて読めます。

慈悲と智慧を、別々の世界にしない

胎蔵と金剛界の関係を表す言葉に、「金胎不二(こんたいふに)」があります。金剛院は、慈悲を表す胎蔵と、智慧を表す金剛界が、二つでありながら一体であることを説明しています。

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相手を受け入れることにも、その苦しみが生じる条件を見つめることにも、仏の働きを読む。このように二つを重ねて考えると、片方だけを優しい図、もう片方を厳しい図として眺めるより、両界として見る意味が深まります。慈悲と智慧という言葉は読み始めの手がかりで、各尊や各会の教えへ進む余地が、その先に残っています。

「曼荼羅」と「曼陀羅」の字が違うとき

図録の題名には、「曼荼羅」「曼陀羅」「マンダラ」などの表記が見られます。野口圭也師の「インド密教とマンダラ」第三回は、サンスクリット語の音を漢字に写す際、複数の表記が生まれたことを説明しています。「荼」と「陀」の違いだけから、別の教えだとは決められません。

同じ資料には、空海の『御請来目録』に胎蔵や金剛界の曼荼羅が記されていることも紹介されています。作品名を書き留めるときは、展示が使う文字をそのまま残すと、後で目録を探しやすくなります。

お堂の中にも、曼荼羅を見いだせる

高野山の根本大塔では、胎蔵の大日如来を本尊とし、その周囲を金剛界の四仏が囲みます。柱には十六大菩薩、壁には密教を伝えた八祖の姿が描かれ、堂内が立体の曼荼羅として構成されています。二幅の絵を知ってから訪れると、像一体だけでなく、その周りや柱へも関心が広がります。

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曼荼羅の諸尊と縁を結ぶ法会には、結縁灌頂があります。拝観で図を読むことと、法会に参加することには、それぞれの入口があります。参加を考えるときは、会の説明や案内に沿って準備できます。

展覧会なら作品の名称と時代、お寺なら本尊と周囲の配置を一つずつ見る。写真で戻れる作品もあれば、堂内での参拝を通して受けとめる場所もあります。その場で許される見方に沿って、二つの世界がどこで重なっているかを探してみてください。

よくある質問

両界曼荼羅とは何ですか?

胎蔵曼荼羅と金剛界曼荼羅を一対として、大日如来の悟りの世界を表したものです。真言密教では、慈悲や智慧の働きを仏たちの姿と配置によって伝えます。

胎蔵曼荼羅と金剛界曼荼羅は、どう見分けますか?

日本でよく見られる両界曼荼羅では、胎蔵は中央の蓮の花を手がかりにできます。金剛界の九会曼荼羅は、全体が縦横三つずつの九つの場面に分かれています。作品名もあわせて読むと確かです。

曼荼羅は絵だけですか?

高野山の根本大塔のように、仏像や柱の絵を配置して、堂内を立体の曼荼羅として構成した例もあります。尊像同士の関係や空間そのものにも教えが表されています。

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