五重塔・三重塔は何のため?舎利と仏塔の見方
遠くからでも見える五重塔を目印に、お寺へ向かう。屋根の重なりや高さに目が向きますが、その塔は何をまつっているのでしょうか。
五重塔や三重塔は、仏の舎利をまつり、供養する仏塔の伝統に連なる建物です。外から見える層の数と、内部の礼拝空間を分けて知ると、塔の前で見るものが増えます。何階まで登れるかという問いにも、寺ごとの答えがあります。
仏を敬う場所としての塔
仏舎利(ぶっしゃり)は、釈迦の遺骨などを指す言葉です。塔には、その舎利を納め、仏を敬い供養する歴史があります。東寺の五重塔案内も、仏陀の遺骨を安置するストゥーパを起源として紹介しています。
いま見ている高い木造の塔だけを出発点にすると、屋根がなぜ重なるかという建築の疑問が先に立ちます。そこへ、仏を敬う場所という意味を重ねると、塔の周囲で人々が手を合わせることも理解しやすくなります。
お墓で見かける板の卒塔婆も、この言葉の系譜につながっています。ただ、境内の建築である塔と、法事で立てる板塔婆では、造りも用い方も異なります。名前が似ているからと、同じ供養の手順を当てはめることはできません。
舎利を分ける物語には、争いを止める言葉もある
漢訳『長阿含経』の「遊行経」末尾には、釈迦の入滅後、各地の人々が舎利を求める場面があります。自分たちの国へ持ち帰り、塔を建てて供養したいという願いです。しかし、舎利のある土地の人々は、初めは分けることを拒みます。
話は穏やかな分配だけでは進みません。双方が兵を動かしかねないところへ、香姓というバラモンが仲立ちに入ります。仏の教えを受け、生きものの安らぎを願ってきた者が、仏の舎利をめぐって傷つけ合ってよいのか、と問いかけるのです。
その言葉を受けて、舎利は八つに分けられ、各地で塔を建てて供養することになります。経文には、分配に使った瓶や、火葬後の炭のために建てられた塔も続きます。塔といっても、物語の中ですでに、納められるものには違いがあります。
この場面では、仏を慕う気持ちと、他者を傷つけないという教えが一緒に問われています。舎利を自分のもとへ置きたいという願いが、争いを止めて分かち合う方向へ動く。塔を拝むとき、この経文の流れも、供養の意味を考える手がかりになります。
最下層に広がる、二つの寺の教え
東寺の五重塔では、初層の心柱を大日如来として、その周囲を四尊の如来と八尊の菩薩が囲みます。寺の説明が示すのは、色彩や尊像によって表された密教の空間です。柱も、ただ構造を見るための目印にとどまりません。大日如来を中心とする教えが、塔の中に形を得ています。
一方、法隆寺の五重塔の最下層には、心柱の四方に土で作られた群像があります。「塔本塑像」と呼ばれ、711年に造られたものです。東面には、病の維摩居士を文殊菩薩が訪れ、問答をする場面が表されています。
遠くからはどちらも五重の塔に見えても、内部で出会うものは同じではありません。一方では仏と菩薩の配置、他方では経典の場面。塔内の解説に仏名や経名が出てきたら、どこに、誰が、どのように表されているかを見ると、その寺が伝える教えへ近づけます。
五重・三重の数と、歩ける階は別に確かめる
五重塔、三重塔という呼び名は、重なる層の数に関わります。五重だから、五階分の部屋を順に見学できるとは限りません。東寺の公式FAQで案内されているのは、特別公開期間中の「初層内部」です。上層まで登る案内とは区別できます。
塔の造りにも違いがあります。香川の本山寺について、五重塔整備委員会の修理資料は、各階に床を張り、参拝者が登る仕組みを記しています。こうした例があっても、今の公開状況は別に確認します。「内部公開」とあれば、見られる階、階段の有無、入口までの経路を尋ねると、予定を立てやすくなります。
見えない足元にも、奉納の跡が残る
塔の内部を見られない日にも、その土地の文化財資料から、納められたものを知る方法があります。東京・谷中の天王寺五重塔は1957年に焼失しましたが、その後、柱を支える礎石から舎利容器や経筒が見つかりました。台東区の解説は、経典の奥書と出土の状況から、再建時の奉納をたどっています。
外から見える塔の高さだけでなく、その下に納められた経典や容器も、建立の願いを伝えます。塔の写真を見返すとき、説明に「心礎」「舎利容器」「経筒」とあれば、今度はその言葉を調べてみることができます。
塔は、建てた時代の姿をそのまま保つものばかりではありません。修理や再建を経て受け継がれた塔も、建物を失い、奉納品が残った塔もあります。年代を一つ暗記するだけでは見えなかった、造ることと守ることの時間が、そこにはあります。
『遊行経』で繰り返されるのは、塔を建てて供養したいという願いでした。いま塔を見上げるときにも、屋根の先から少し視線を下げ、その場所で誰を敬い、何を伝えているのかをたどれます。
よくある質問
五重塔は、五階まで登るための建物ですか?
五重という名は層の数を表しますが、各階を参拝者が歩けることまでは意味しません。塔ごとに構造と公開範囲が異なります。東寺では、特定の期間に初層内部を公開する案内があります。
塔の中心の柱は、どの寺でも大日如来を表しますか?
東寺は心柱を大日如来として、その周囲に如来と菩薩を配した密教空間を説明しています。この意味を、宗派や造立事情の違うすべての塔に当てはめることはできません。