職場のハラスメントを見た時、周囲の人にできること
会議で同僚が繰り返し侮辱されている。休憩室では、一人だけを笑いものにする話が続く。おかしいと思っても、その場で声が出ないことがあります。次は自分が標的になるかもしれず、相手も助けを望んでいるのか分からない。
周囲にいる人の行動は、その場で言い返すことだけではありません。後で声をかける、見たことを残す、相談に協力するなど、できることを具体的に考えられます。本人が望むことを聞きながら、自分だけで問題を収めようとしない姿勢も必要です。
その場で動けなかった後にも、できることはある
相手を笑う輪に加わらない。話が終わった後、本人に一人で話せる時間があるか尋ねる。「さっきのことが気になっています。今、話しても大丈夫ですか」と、返事を待つところから始められます。すぐに詳しい事情を話してもらう必要はありません。
暴力などの危険がある時は、単独で割って入って決着をつけようとせず、周囲の助けを呼び、安全を確保することを優先します。後で落ち着いて話せる状況なら、「私はあの言葉を聞きました」と、自分もその場にいたことを伝えられます。「気にしなければいい」と早く終わらせずに聞くことができます。
自分が見たことを、自分の言葉で残す
厚生労働省の「あかるい職場応援団」Q&Aは、ハラスメント行為に気づいた人に、上司や人事、職場の相談窓口への相談を勧めています。被害を受けた本人だけが、問題を説明する役を担うとは限りません。
見聞きしたことを残すなら、日時、場所、誰が何を言い、何をしたかを書きます。「ひどい上司だった」という評価だけでなく、自分が覚えている発言を記します。正確な言い回しを思い出せなければ、要旨であることや曖昧な部分も残せます。
会議の途中から入ったのであれば、そのことも書きます。後で本人から聞いた話は、自分がその場で聞いた言葉とは分けます。支えたい相手のためでも、見ていない場面まで断言すると、確かめられる事実がかえって見えにくくなります。
記録は相談のために扱い、同僚のグループで回覧して評判を集める材料にしないようにします。複数の人が見ていた場合も、先に話を合わせるより、それぞれが覚えていることを残せます。違いがあれば、違いを含めて担当者へ伝えます。
善い友は、苦しい場面でどう関わるのか
漢訳『長阿含経』第十一巻の「善生経」には、親しいように見えて頼りにならない関係と、親しむべき関係の区別があります。善悪を問わず調子を合わせ、困難になると離れる相手を戒める一方、人のためになる友の姿を具体的に挙げています。
そこで説かれるのは、悪い行いを止めること、人のよいことを喜ぶこと、恐怖から助けること、人目を離れたところで助言することなどです。天へ向かう善い道を示すことも含まれ、単なる人づきあいの心得より広い、在家者の生き方の教えになっています。
職場で考えるなら、相手が困っている時にも、関係を切らずにいられるかが問われます。ただし、経にある身命を惜しまない友の姿を、同僚に危険な対決を求める命令にはできません。現代の職場には組織の責任と相談の仕組みがあります。それを使いながら、助けを求める人を孤立させない関わりを考えられます。
「助けたい」と「代わりに決める」を分ける
本人と話せるなら、「窓口を一緒に調べようか」「私が見た場面について説明してもいい?」と、協力の内容を具体的に尋ねます。「何とかしてあげる」とだけ約束すると、本人は何が始まるのか分からないままになります。
本人が迷っている場合には、何が怖いのかも聞けます。名前が広まることなのか、相手と二人で話すよう求められることなのか、仕事を続けにくくなることなのか。会社の窓口へ、情報を誰が扱い、どの段階で共有するのかを確認する相談も考えられます。
同Q&Aの相談対応の説明では、本人の意向を尊重し、行為者に話を聴く際には同意を得ることが示されています。周囲の人も、本人の知らないところで当事者同士の話し合いを組んだり、謝罪を受け入れるよう説得したりしないようにします。会社による確認と、個人的な仲裁を混ぜないためです。
「相手も悪気はなかった」「修行だと思って耐えよう」と励ましたくなることもあるでしょう。忍辱を職場の我慢と結びつけて悩む時には、苦しい状況を続けるよう他人が宗教の言葉で押すことに、特に気をつけたいものです。話を聞いた人が、許す時期まで決めることはできません。
協力した後のことも、話しておく
窓口へ説明することになったら、自分が答えられる範囲を伝えます。分からない点を質問された時には、分からないと言えます。後で記憶の誤りに気づいた場合も、担当者へ修正を伝えられます。広めた情報を訂正する時と同じく、味方であることと、事実を正確にすることを一緒に大切にできます。
相談に協力した自分も不安になるなら、その不安を相談先に伝えます。公式Q&Aは相談等を理由とした不利益な取扱いの禁止を説明していますが、それをもって現実の心配がすべて消えるわけではありません。窓口との連絡方法や、問題が続く場合に誰へ知らせるかを確認できます。
本人と顔を合わせた時には、毎回経過を聞き出すだけでなく、普段の仕事の話もできます。説明や報告をし続けなければ関われない関係にしないことです。見たことを伝え、望まれる協力を引き受け、必要な相談へつなぐ。傍らにいる人として、続けられる関わりを選べます。
よくある質問
被害を受けた本人でなくても、相談してよいですか?
厚生労働省の「あかるい職場応援団」は、ハラスメント行為に気づいた人にも、上司や人事、職場の相談窓口への相談を勧めています。自分が見聞きしたことと、推測や伝聞を分けて伝えます。
本人が「何もしないで」と言ったら、どうすればよいですか?
何を心配しているのか、話せる範囲で聞きます。勝手な対決や仲直りの場を作らず、どこまで協力してよいか相談できます。ただし、差し迫った危険がある場合は安全を優先し、必要な助けにつなぎます。