無財の七施とは?お金を使わない布施を日常で考える

お寺の寄付の案内を見て、今月は難しいと思う。困っている知人に何かしたくても、お金も時間も十分にはない。そんな時、何も差し出せない自分が少し薄情に感じられることがあります。

無財の七施(むざいのしちせ)は、財物を使わずに行える七つの布施です。お金を包む場面からいったん目を離し、人への向き合い方や、今ここにある場所の使い方を見ていく教えです。

原典では、何を七つに数えている?

出典は『雑宝蔵経』巻六の「七種施因縁」です。CBETAの原典には、父母、師長、沙門、婆羅門に対する振る舞いとして、七つが順に説かれています。沙門は出家の修行者、婆羅門は古代インドの宗教者を指します。本文の具体的な相手を知ると、古い教えがどんな関係の中で語られたのかも分かります。

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無財の七施の名前と意味

名前読み方原典での行いの要点
眼施げんせ悪意ある目つきを向けず、好ましいまなざしで接する
和顔悦色施わげんえつじきせしかめ面で接せず、和やかな表情を向ける
言辞施ごんじせ荒い言葉を避け、柔らかい言葉をかける
身施しんせ身を起こして迎え、礼をする
心施しんせ和善の心をもって供養する
床座施しょうざせ座る場所を整え、自分の席も差し出す
房舎施ぼうしゃせ屋内で行き来し、座り、休める場所を提供する

原典には、それぞれの行いによる来世の果報や、未来に成仏した時の徳まで記されています。対人関係の小技だけを並べた文章ではなく、仏道へつながる布施として語られている点も、読み落とせません。

表情が動かない日にも、言葉は選べる

眼施と和顔悦色施は似ていますが、目つきと顔の表情にそれぞれ目を向けています。相手が話し始めた時、画面を見たまま返事をするのか、少し顔を上げるのか。暮らしの中なら、そうした小さな動作から考えられます。

ただ、目を合わせることが苦手な人もいます。悲しみの最中には笑えません。相手の安心を考える時、一定の笑顔や視線だけを正解にすると、かえって負担になることがあります。「聞いています」と一言添えたり、急がせず待ったりする関わり方も選べます。

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言辞施の手がかりは、道元の愛語ともつながります。たとえば手伝えない依頼に、無言で遠ざかる代わりに「今日は難しいです。明日の午前なら確認できます」と伝える。柔らかさと、できる範囲を正確に伝えることは両立します。

身施と心施を一緒に読む

原典の身施には、立ち上がって迎え、礼をする所作が出てきます。天台宗の法話では、荷物を持つなど身体による奉仕へと説明が広がっています。古い本文にある行いと、今の暮らしへの応用を分けて読むと、自分でも例を考えやすくなります。

続く心施には、外から見える供養をしていても、心が和善でなければ施しと呼べない、という厳しい言葉があります。荷物を運びながら相手を見下したり、後から何度も恩を数えたりする自分の気持ちにも、目が向く箇所です。

親切の後に疲れや不満が出たら、その感情を隠して同じ量を続けるより、引き受け方を見直せます。「ここまでは手伝えます」と先に伝え、残りは別の人に頼む。相手を思う慈悲の実践には、自分の体力を見誤らないことも関わってきます。

手を貸す前に「持ちましょうか」と聞けば、相手が自分で運びたい場合にも返事を待てます。助けを断られた時に、せっかくの好意を無駄にされたと感じるなら、その気持ちも心施の箇所に戻る手がかりです。してあげたいことと、相手が今受け取りたいことには、ずれがあるかもしれません。

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席と場所は、必要な人が使えるように

床座施には、座席を用意することと、自分の座っている席を譲ることが含まれます。電車で立つことだけを思い浮かべがちですが、集まりの前に椅子を一脚出す、通り道を空ける、といった準備にも目を向けられます。自分も座って休む必要がある時には、周囲に声をかけて助けをつなぐ方法があります。

房舎施は、屋内で過ごせる場所を提供することです。原典の言葉から、休める場所にも布施の意味があると分かります。現代の家庭では、同居人の了解や安全、使える広さを確かめたうえで考えることになります。知らない人を無条件に泊める、という一律の義務にしてしまうと、住む人の事情が消えてしまいます。

七つ全部を、今日そろえなくても

七施の一覧を見た後、今日できなかった項目に印を付けたくなるかもしれません。それよりも、次に人に会う一場面を思い浮かべると、使いどころが見えてきます。受付で相手の説明が終わるのを待つ。訪ねてきた人に、座れる場所を案内する。言い過ぎた時には、言葉を直す。

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お金の余裕が戻った時には、財物を差し出す布施も考えられます。今できる関わりを見つけたからといって、ほかの支えが要らなくなるわけではありません。

寄付の案内を閉じたその日にも、人と接する機会は続きます。次の一言や、目の前の椅子の置き方なら、今の自分が確かめられます。

よくある質問

無財の七施には、どんなものがありますか?

眼施、和顔悦色施、言辞施、身施、心施、床座施、房舎施の七つです。まなざし、表情、言葉、身体、心、座る場所、屋内の場所を通した布施を指します。

無財の七施の出典は何ですか?

『雑宝蔵経』巻六の「七種施因縁」です。財物を損なわずに行える七つの施しと、その果報が説かれています。現在よく聞く奉仕や声かけの例には、原典を日常へ広げた説明も含まれます。

つらい時も笑顔で接しないといけませんか?

笑えない日まで自分を責める必要はありません。七施を暮らしで考えるなら、今の体力や状況でできる関わり方を選べます。休む必要のある人が無理に席を立ったり、安全を確かめず家を開放したりすることまで求めるものにはできません。

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