坐禅を始めるなら、まず姿勢とひと呼吸から
坐禅を始めるとき、最初に確かめたいのは無理なく坐れて、息が通る姿勢です。足を高く組むことや、頭の中を空っぽにすることを初日の課題にしなくて構いません。
日本の坐禅には、宗派や道場による教え方の違いがあります。ここでは姿勢の基本と、臨済宗の入門で紹介される数息観を取り上げます。数を数える方法を、すべての坐禅に共通する必須の手順とはしません。
坐禅と「禅定」の関係
禅定は、仏教で心が散乱せず落ち着いているあり方や、その修習を指す言葉です。坐禅は坐る姿勢で行う実践ですが、その意味を集中力の強さだけで測ることはできません。
曹洞宗は、ひたすら坐る只管打坐(しかんたざ)を大切にします。曹洞宗の宗旨・教義では、坐禅を中心とする実践と、日々の暮らしの行いが結びつけられています。気持ちが静かになったかどうかだけを、成否の判定に使うものではありません。
一方、臨黄ネットの坐禅入門では、姿勢と呼吸を調える具体的な方法として数息観が紹介されています。まず一つの教え方を確かめて取り組むと、異なる本の指示を全部同時に守ろうとして戸惑わずに済みます。
足より先に、坐る場所を決める
自宅では、通り道を避け、暑すぎず寒すぎない場所を選びます。画面や通知が気になるなら、短いあいだ端末を視界から外します。腹部を締めつけない服装も、姿勢を調える助けになります。
床に坐る場合は、坐蒲や適度な厚さの座布団でお尻を支えます。結跏趺坐は両足を反対側の腿にのせ、半跏趺坐は片足をのせる形です。ただし、写真に合わせて膝を押し下げるのは避けてください。関節の痛みが出る形を保つ必要はありません。
足を組むのが難しければ、椅子での坐禅から始められます。安定した足元と座面を用意し、上半身を支えやすい高さに調整します。床に坐る方法へ移らなければならない、という順番でもありません。
手、背中、目線を一つずつ
背中は反り返らせず、頭が上体の上に落ち着くようにします。肩を持ち上げていないか、顎を突き出していないかも確かめます。姿勢を維持しようとする力が強すぎると、息まで詰めやすくなります。
手のひらを上に向けて右手を下に置き、その上に左手を重ね、親指の先を軽く合わせます。これが法界定印(ほっかいじょういん)です。左右の順序と形は、曹洞宗の図解でも確認できます。
目はぎゅっと細めたり閉じきったりせず、前方の床へ自然に視線を落とします。一点をにらみ続ける必要はありません。体を整えたら、息を止めずに坐れているか、もう一度確かめます。
数息観では、一から十へ
数息観(すそくかん)は、呼吸に数を添える方法です。臨済宗の上記の案内では、一回の吐く息と吸う息に「ひとつ」、次に「ふたつ」と数え、十まで来たら一に戻ります。
自宅で初めて試すときは、無理に息を長く引き延ばさず、次の流れで確かめてみてください。
- 安定した姿勢をつくり、今の息の出入りを感じます。
- 吐いて吸う一巡に、心の中で一つ数を添えます。
- 十まで進んだら、一に戻ります。
- 途中の数を見失ったら、一から始め直します。
数は正確さを競う点数ではありません。十まで行けない自分を責め始めると、数えることが別の考え事になってしまいます。やり直しを大げさにせず、その息から続けます。
曹洞宗の坐禅を学ぶ場合は、必ず数を使うとは限りません。曹洞宗の国際向け案内でも、息を操作せず、思いを追わずに坐る姿勢へ戻ることが説かれています。参加する道場の指導があるなら、そこで教わった方法に沿います。
雑念、眠気、痛みは同じ扱いにしない
予定や会話を思い出したときは、その話の続きを考えていたと気づけば十分です。数息観なら数へ、姿勢を中心に坐るなら体と息へ戻ります。毎回の坐禅に、特別な感覚が訪れるとは限りません。
眠気が強いときは、目線や姿勢を確かめ、それでも難しければ休息を選びます。睡眠不足を長時間の坐禅で乗り切ろうとはしません。足の痛みやしびれは、注意を向け直すだけで片づけず、姿勢を変える合図にします。
呼吸への注意で強い不安や息苦しさが増すなら、いったんやめて周囲を見渡し、普段の動作へ戻ります。不調が続く場合は医療の相談を優先してください。坐禅の最中だからといって、体調の変化をすべて修行上の現象と決めつける必要はありません。
坐禅と考えごとの関係を文章から学ぶなら、道元の『普勧坐禅儀』と非思量も手がかりになります。
終わり方まで含めて、一回の坐禅
最初は、数分の短い時間で姿勢を確かめるくらいから試せます。決めた時刻になっても、すぐ立ち上がらず、手をほどき、上体と足をゆっくり動かします。足の感覚が戻ってから立ちましょう。
続けるうえで迷った点は、長さや集中の記録より具体的に残すと役立ちます。「右膝が痛んだ」「息を数えると肩が上がる」などです。坐禅会でそのまま伝えれば、姿勢の助言を受けやすくなります。
寺院に参加するときは、初心者向けの説明、椅子の利用、途中で姿勢を変える方法を確認します。肩を打つ棒が気になる方は、警策の意味と受け方も先に読んでおくと、当日の説明を落ち着いて聞けます。
よくある質問
坐禅は何も考えないようにする練習ですか?
思いが浮かぶこと自体を失敗とはしません。考えを追い続けていたと気づいたら、姿勢や息を確かめます。数息観では数に戻り、曹洞宗の坐禅では坐る姿そのものを調えます。
足を組めなくても坐禅はできますか?
椅子を使う方法もあります。曹洞宗は公式にいす坐禅を紹介しています。膝を押して無理に結跏趺坐をつくる必要はありません。
初めてなら何分坐ればよいですか?
自宅で試すなら、まず数分を目安に姿勢と呼吸を確かめる方法があります。これは効果を保証する時間ではありません。寺院の坐禅会では、坐る時間や途中退出の方法を先に確認します。