恋人との位置情報共有が苦しい時。安心と監視の境界を考える
待ち合わせのために始めた位置情報の共有が、いつの間にか毎日の行動確認になっている。「そこに何をしに行ったの」「なぜすぐ返事をしなかったの」。説明することが増え、地図にどう映るかを気にして寄り道をやめてしまう。
こうした苦しさがある時、相手をもっと安心させれば解決する、と自分だけの課題にしなくてよいのです。まず見たいのは、共有の機能より、それを通じてどんな要求が続いているかです。
最初の約束と、今の使われ方は同じか
旅行中の合流に使うことと、普段の行き先を全て説明することには違いがあります。「お互いに見られるから公平」と言われても、片方だけが質問され、返答次第で怒られるなら、負担は同じではありません。
埼玉県のデートDV啓発冊子は、位置情報共有の強要や、すぐに返信しないと怒ることを、デジタル暴力の例に挙げています。見たいと言う人に悪意があるかを読み当てるより、断れるのか、生活が制限されていないかを確かめる方が、相談する内容を具体的にできます。
「今も使いたい」と答えた理由も振り返れます。本当に便利だからか、機嫌を損ねるのが怖かったからか。以前の返事と違う気持ちになったからといって、今の苦しさまで消えるわけではありません。
怖さがあるなら、話し合いを急がない
関係について落ち着いて意見を交わせるなら、何のために、いつまで使うかを相談する余地があります。一方、位置が見えなくなると家へ来る、友人に会うと責められる、別れ話をすると脅される場合には、同じ進め方にはできません。
「私にも少し自由が欲しい」と上手に言えれば安全になる、と考えて一人で会いに行く必要はありません。SNSで人を表示しない選択とも違い、居場所を知られている相手との関係には、画面の外の行動が関わります。
共有の停止やアカウントの変更をする前に、「変更に気づかれたら何が起きそうか」も相談してください。相手が端末や履歴を見る状況なら、どの連絡手段を使えるかから支援者と考えます。設定を変えることと、安全に距離を取れることを一緒に扱うためです。
知らない追跡機器を見つけた場合、兵庫県警の案内は警察への相談を勧めています。自分で相手に突きつけて説明を求めることを、解決の条件にしなくてよいでしょう。
自分を大切にするという、古い経の問い
漢訳『雑阿含経』第1228経では、波斯匿王が、自分を愛するとはどういうことかを考えて仏に尋ねます。仏は、身体・言葉・心で悪い行いをしていれば、自分を愛しているつもりでも、本当の意味で自分を大切にしていることにはならないと説きます。善悪の行為と、その後の果を含む教えです。
自分の安心が欲しい時にも、そのために何をするかが問われる。この点は、恋人との関係を考える手がかりになります。不安を感じることと、相手を脅して従わせることは分けて見られます。「心配だから」という言葉だけで、どんな要求でも善い行いになるわけではありません。
要求を受けている人が、相手の心を修める役まで背負う必要もありません。相手が変わるかどうかを待ちながら、自分の安全について誰かに相談することはできます。この経を、被害に遭うのは本人の修行不足だという判定に使う理由はありません。
相談の時には、怖かった出来事から話せる
「これはDVでしょうか」と言葉を確定してからでなくても、「位置共有をやめたいが、怒って家に来るのが怖い」と具体的に話せます。使っているアプリ、相手が知っている住所、言われたことなど、分かる範囲を伝えます。記録を作るために危険なやり取りを続けたり、証拠が揃うまで相談を待ったりする必要はありません。
内閣府のDV相談ナビは、全国共通の「#8008」から近くの配偶者暴力相談支援センターにつなぐ案内です。通話料がかかり、相談は各機関の受付時間内です。つながらない回線もあるため、その場合は公式一覧から窓口へ直接連絡できます。
交際中の相手との問題も、地域の相談窓口や警察に相談できます。兵庫県警は、同棲していない交際相手との事案など、同県警のDV事案の区分に入らない相談でも、要望を聞いて必要な対応を行うと説明しています。法の適用を自分で結論づけず、具体的な状況を伝えましょう。今まさに身に危険がある緊急時は110番です。
友人に話すなら、してほしくないことも伝える
相談相手の友人が、善意で恋人に連絡してしまうことを心配するなら、「本人には連絡しないでほしい」「私の居場所を伝えないでほしい」と最初に言えます。事情を聞いてもらうことと、二人の仲裁を頼むことは別の依頼です。
親の見守りカメラを検討する時にも、見る側の安心と、見られる人の生活は分けて考えます。恋人同士でも、交際していることだけで行動の説明を無限に求められる関係にする必要はありません。
相談の一歩は、その日に別れる決心を言い切ることとは限りません。「好きな気持ちもある。でも今の要求が怖い」と、両方を話すところから始められます。
よくある質問
自分から位置共有に同意した場合、嫌だと言う資格はありませんか?
始めた時に納得していても、今の使われ方が苦しいことは話してよい問題です。ただし、断ると脅されるなどの怖さがある時は、一人で相手を説得しようとせず、その状況を相談窓口へ伝えてください。
位置情報を共有しているだけで、デートDVと決まりますか?
共有という機能だけで一律には決められません。共有の強要、拒否した時の脅し、行動や交友関係の制限など、実際の関わり方を見ます。名前を確定できなくても、困っていることを相談できます。