除夜の鐘はなぜ108回なのか?煩悩の数字に隠された意味

カテゴリ: 儀礼・風習

大晦日の夜11時を過ぎたあたりから、どこか遠くのお寺から鐘の音が聞こえてくる。テレビの中継で見ることもあれば、近所のお寺まで足を運んで自分で撞いたことがある方もいるかもしれません。

あの鐘を「108回」つくのは、人間の煩悩が108あるからだと一般的に言われています。

ただ、「なぜ108なのか」と聞かれて答えられる人はそう多くない。ちょうどいい数字を誰かが決めたのか、それともちゃんとした計算があるのか。実は仏教の中にいくつかの数え方が伝わっています。

煩悩はどうやって108になるのか

最もよく知られている数え方はこうです。

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人間には六つの感覚器官があるとされています。目、耳、鼻、舌、体、そして心。仏教ではこれを「六根」と呼びます。

それぞれの器官が外の世界と接触したとき、三つの感じ方が生まれます。心地よい(好)、不快(悪)、どちらでもない(平)の三つ。ここまでで6×3=18。

さらに、それぞれに「執着している状態(染)」と「執着していない状態(浄)」の二つがあるとされ、18×2=36。

そして、煩悩は過去、現在、未来の三つの時間にわたって起こるとされているので、36×3=108。これが108の成り立ちです。

もう一つ、別の数え方もあります。四苦八苦をそのまま算数にする方法。4×9=36、8×9=72、合わせて108。これは語呂合わせに近い俗説ですが、日本では広く知られています。

どちらが正しいかというよりも、仏教が言おうとしていることは一つです。煩悩というのは数えきれないほど多い。108はその「多さ」をまとめた象徴的な数字であるということ。

「煩悩を消す」ではなく「一つずつ手放す」

鐘を108回つく。一回つくごとに煩悩が一つ消える。そういうイメージで語られることが多いですが、仏教の煩悩に対する考え方は、実はもう少し複雑です。

煩悩は完全に「消す」ものではないという立場があります。特に日本の大乗仏教では「煩悩即菩提」、つまり煩悩そのものの中に悟りの種がある、という考え方が古くからあります。悩むからこそ人は変わろうとする。苦しいからこそ何かに手を合わせたくなる。その衝動自体が、仏道の入り口になりうる。

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だから除夜の鐘で108の煩悩を「退治する」というよりは、一つひとつの煩悩に「今年もお世話になりました」とでも言いながら、手放していくような感覚に近いのかもしれません。

なぜ年越しのタイミングなのか

除夜の鐘を年越しに撞く習慣は、中国の宋代に始まり、日本には鎌倉時代頃に伝わったとされています。

年が変わる瞬間というのは、区切りとしてこれ以上はっきりしたものはありません。旧年のうちに煩悩を清め、新年を少しでもまっさらな心で迎えたいという願い。この「リセット」の感覚は、仏教の教義よりも、もっと素朴な人間の心理に根ざしているのかもしれません。

ちなみに、108回のうち107回は旧年のうちに撞き、最後の一回を新年の零時を過ぎてから撞くのが一般的な作法です。新しい年の最初の鐘の音を清い状態で響かせるという意味があります。

お寺によっては参拝者が自由に撞けるところもあり、冬の深夜に並んで順番を待つ時間も含めて、年越しの体験の一部になっています。

鐘の音が心を静める理由

除夜の鐘に限らず、お寺の鐘の音には独特の響きがあります。撞いた瞬間の衝撃音ではなく、その後にゆっくり広がっていく余韻。あの余韻が長く伸びて、やがて静寂に溶けていく過程が、聴いている人の心拍や呼吸を自然にゆるやかにすると言われています。

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仏教の梵鐘は、もともと修行の時間を知らせるための道具でした。朝の鐘で目を覚まし、夕の鐘で一日を終える。「ここから切り替わりますよ」という合図です。

大晦日から元旦への切り替わりも、鐘はその合図を鳴らしています。去年の自分と今年の自分を分けているのは、カレンダーの日付だけです。でもあの鐘の音を聴いた瞬間、なんとなく気持ちが切り替わる感覚がある。鐘は、時間に区切りを入れてくれる道具なのだと思います。

無常という仏教の言葉があります。すべてのものは変化し続ける。108の煩悩も、去年の後悔も、今夜のうちに手放せる。変わることができる。鐘が伝えているのは、そういう約束です。

よくある質問

除夜の鐘は大晦日だけに鳴らすものですか?

いいえ。お寺の鐘(梵鐘)は本来、毎日の朝夕に時を知らせるために撞かれるものです。除夜の鐘は年越しの特別な行事であり、旧年の煩悩を払い、新年を清らかな心で迎えるという意味があります。鐘の音自体は一年を通じてお寺で鳴らされています。

公開日: 2026-03-26最終更新: 2026-03-26
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