数珠の正しい持ち方とは?選び方・宗派別の違いをわかりやすく解説
お葬式や法事に出かける直前、「数珠、どこにしまったっけ」と慌てて引き出しを探す。見つけたはいいものの、持ち方がよくわからない。左手? 右手? 合掌のとき、どうかければいいのか。周りを見ながらそっと真似する。
日本人にとって数珠は身近な仏具です。ほとんどの家に一つはあります。でも、その意味や正しい使い方を知っている人は意外と少ない。この記事では、数珠の基本を整理します。
数珠とは何か
数珠(じゅず)は、サンスクリット語で「マーラー(mālā)」と呼ばれる仏教の道具です。基本の機能はとてもシンプルで、念仏や読経の回数を数えること。
念仏のとき、「南無阿弥陀仏」を何回唱えたか。読経のとき、何遍読んだか。頭の中だけでは追いつかないので、一声ごとに珠を一つ繰り、一周すれば回数がわかる仕組みです。
計数の道具と聞くと地味に感じるかもしれませんが、もう一つ大切な機能があります。手の指で珠を繰る触感が、意識を「今、ここ」に引き戻す錨(いかり)になるのです。念仏中に気がつくと別のことを考えている、というのは誰にでもある経験です。指先の感覚がそれを防いでくれます。
つまり数珠は、お守りでも装飾品でもなく、修行のための実用的な道具です。
108珠の意味と数珠の種類
正式な数珠は108珠が基本です。この数字には仏教的な意味があります。
六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)に、三種の感受(快・不快・中性)、二種の状態(清浄・汚染)、三世(過去・現在・未来)を掛け合わせると、6 × 3 × 2 × 3 = 108になります。つまり108は衆生の煩悩の数を象徴しています。珠を一つ繰るたびに、一つの煩悩を超えていくという意味が込められています。
もう一つの実用的な説明もあります。毎日一万回の念仏を日課にしている人にとって、一周108珠の数珠は計数の単位として使いやすいのです。
108珠のほかに、54珠(菩薩の修行階位を象徴)、27珠(声聞の修行段階を象徴)などもあります。ただし日本では、こうした珠数の違いよりも、宗派ごとの形の違いのほうがずっと重要です。
本式数珠と略式数珠の違い
日本の数珠には大きく分けて二種類あります。
本式数珠(正式数珠)は、各宗派が定めた正式な形状の数珠です。108珠を基本とし、房(ふさ)の本数や配置、珠の大きさなどが宗派ごとに決まっています。自分の宗派の法事や日常のお勤めで使うものです。
略式数珠(片手数珠)は、宗派を問わず使える簡略化された数珠です。珠の数は20〜40珠程度で、片手で持てるサイズ。葬儀や法事に参列するとき、相手の宗派がわからなくても安心して使えます。初めて数珠を買う人には、この略式数珠が最も実用的です。
宗派ごとの主な特徴を簡単にまとめると、以下のとおりです。
宗派別・数珠の特徴
| 宗派 | 特徴 |
|---|---|
| 真言宗 | 振分数珠。108珠を二重にして使う。房は2本ずつ |
| 浄土宗 | 二つの輪を組み合わせた独特の形(日課数珠) |
| 浄土真宗 | 片手で持てる形。「蓮如結び」と呼ばれる独特の房の付け方 |
| 日蓮宗 | 5つの房が特徴的 |
| 曹洞宗・臨済宗 | 108珠のシンプルな形。輪を一つにまとめて持つ |
自分の家の宗派がわかっている人は本式を一つ持っておくとよいでしょう。わからない場合や、複数の宗派の法事に出る機会がある場合は、略式数珠で十分です。
数珠の正しい持ち方
日本での数珠の持ち方は、中国や台湾とはかなり異なります。日本では基本的に合掌のときに両手にかけるのが作法です。
基本の持ち方。合掌するとき、数珠の輪を両手の親指と人差し指の間にかけ、房を下に垂らします。これが最も一般的な方法で、略式数珠ならどの宗派でもこの形で問題ありません。
待機中の持ち方。合掌していないとき(お焼香の順番を待っているときなど)は、左手首にかけておくか、左手で軽く握っておきます。畳やイスの上に置くのは避けたほうがよいとされています。
念仏で数珠を使うとき。念仏の修行として使う場合は、左手に持ち、親指で一珠ずつ手前に繰ります。一声の「南無阿弥陀仏」につき一珠。一周したら最も大きい珠(母珠、親珠とも呼ばれる)のところで折り返し、逆方向に繰り続けます。
焼香の手順や、立ち居振る舞いのマナーに気を取られがちですが、最も大切なのは心を込めて手を合わせることです。持ち方が多少違っていても、誰も咎めません。
数珠にまつわる誤解
数珠について、いくつか根強い迷信があります。
「数珠を貸し借りしてはいけない」。特に仏教的な根拠はありません。家族間で使い回しても問題ありません。ただ、葬儀では大人は自分の数珠を持つのが礼儀とされているため、常識的なマナーとして一人一つ持っておくのが安心です。
「数珠をつけたままトイレに入ってはいけない」。気になるならポケットやカバンにしまえばよいですが、仏教の教えとしてそのような禁止事項はありません。数珠は道具であって、聖遺物ではないのです。
「数珠の材質で効果が変わる」。木珠でも石珠でもプラスチック珠でも、念仏の功徳に差はありません。材質の選択は予算と好みの問題です。ただし、毎日の修行に使うなら、手に馴染む大きさと重さのものを選ぶと長く続けやすくなります。
数珠は仏教の道具の中で最も身近なものです。せっかく手元にあるなら、法事のときだけ引き出しから出すのではなく、日々の暮らしの中で手に取ってみてください。一珠を繰りながら呼吸を整えるだけでも、忙しい一日の中に静かな間が生まれます。
よくある質問
数珠は宗派が違っても使えますか?
略式数珠(片手数珠)であれば、どの宗派の法事でも使えます。本式数珠は宗派ごとに形が異なるため、他宗の法事では略式を使うのが無難です。初めて購入するなら、略式数珠を一つ持っておけばほとんどの場面に対応できます。
数珠が切れたのは不吉な兆候ですか?
仏教的には、数珠が切れることに吉凶の意味はありません。糸は使ううちに劣化する消耗品です。切れたら仏具店で修理してもらうか、新しいものを用意すれば大丈夫です。