騒音の苦情が来て、家にいるのが怖い時に。事実と受け止め方を分ける
管理会社から「足音について苦情が来ています」と電話があった。通話を終えてから、椅子を引く音も、子どもが立ち上がる音も気になる。廊下で住人とすれ違うたびに、この人が言ったのだろうかと考えてしまう。
騒音の苦情を受けた時は、まず指摘された音の具体的な内容を確かめます。対応が必要なことと、まだ分からないことを分けると、自分を責めるだけでも、相手を疑うだけでもない返事を考えられます。
最初の電話で聞きそびれたこと
「うるさいと言われた」という記憶だけが残ると、一日中の生活を否定されたように感じるかもしれません。管理会社へ折り返す時には、対象を絞る情報を尋ねます。
- いつ、何時ごろの音か。
- 足音、物を引く音、音楽など、どのような音か。
- 一度の出来事か、繰り返し聞こえているのか。
- 自宅への個別の確認か、建物全体への注意なのか。
相手の氏名を知ることより、どの生活場面を見直せるかが先です。管理会社も詳細をまだ把握していなければ、分かる範囲を教えてもらい、追加の確認をお願いできます。自分でも通話の日時と内容を残しておきます。
心当たりがある時、ない時
夜遅くに家具を動かしたなど、思い当たることがあるなら、その行動を具体的に扱います。「その時間に椅子を動かしていました。置き方と動かし方を見直します」と伝えれば、何を変えるかも共有できます。
川崎市の生活騒音の資料は、申し入れを受けた時、音量、設置場所、使用時間、異常音の有無などを点検するよう案内しています。大きな買い物や工事をすぐ決める前に、指摘された音が、どんな時に出るのかを見られます。
一方、その日は外出していたなど、心当たりがないこともあります。「その時間は不在でした。日時をもう一度確認していただけますか」と、分かっている事実を返せます。ただ思い出せない場合は、不在だったと断定せず、「今のところ思い当たりません。家族にも確認します」と伝えます。
心当たりがないことと、自宅が原因ではないと確認できたことにも違いがあります。分からない点を残したまま、決めつけずにやり取りする余地があります。
仏教には、指摘を受ける側への教えもある
パーリ経典の『増支部』5.167では、舎利弗が僧たちに、他者の過ちを指摘する時のあり方を語ります。時にかなうこと、事実であること、穏やかさ、目的にかなうこと、善意が挙げられています。僧団内の相互の教誡についての経典です。
その後に、指摘される側の姿勢も説かれます。相手がどんな仕方で言ったとしても、真実をよりどころとし、挑発に乗らない。そして自分にそのことがあると知るならあると、ないと知るならないと答えます。
この教えを今の苦情への返事に照らすなら、相手の言い方への怒りと、確認すべき事実を分けてみることになります。強く言われたから全て認める、腹が立つから全て否定する。そのどちらにも急がず、知っていることに合う返事を選べます。
もちろん、経典で騒音の原因や責任が決まるわけではありません。実際の確認、建物の決まり、必要な相談を進める間、自分の返事を見失わないための読み方です。
子どもにも、変える行動を具体的に伝える
足音の苦情を聞いて、子どもが少し動くたびに「静かに」と言い続けることがあります。それでは、子どもも何をすればよいか分からず、家の中で緊張が続いてしまいます。
「夜はこの場所で跳ばないようにしよう」「椅子は引きずらず、大人と一緒に動かそう」と、場面を限定して伝える方法があります。年齢によってできることも違うため、大人が部屋の使い方を見直したり、管理会社に対応できる範囲を相談したりすることも必要です。
生活音を全てなくすことはできません。同時に、困っている人がいるという連絡を無視してよいわけでもありません。できた変更を伝え、その後の状況を管理会社などと確認する。子どもだけに責任を負わせず、住む人同士の調整として続けられます。
誰が言ったのかを探し続けないために
近所付き合いで距離に迷う時にも、顔の見える関係だからこその難しさがあります。けれど、廊下で会った人の表情を根拠に、苦情の相手を決めることはできません。確認や連絡は、まず管理会社などの窓口に戻せます。
渋谷区の案内も、集合住宅内の騒音について、管理組合、大家、管理会社への相談を示しています。同区が説明する条例の適用範囲を、全国の住宅にそのまま当てはめることはできません。住む地域の相談先と建物の規約を確かめます。
脅す言葉や危険な訪問がある場合には、その経緯も残し、管理会社や警察などに安全について相談してください。怒りや恐怖を抱えたまま、直接訪ねて話をつけることを、修行として引き受ける必要はありません。
一度返事をした後は
管理会社へ、確認できたことと見直すことを返したら、次に何を確認するかも相談しておきます。連絡が来るまで、何度も自分で床を踏んで音を試し続けても、相手の部屋での聞こえ方が分かるとは限りません。
自分自身も周囲の騒音で眠れないほどになっているなら、その困りごとは別に伝えられます。相手への対抗材料にせず、日時と影響を整理して相談します。
今日確認できたのは、この時間の、この音だった。まだ分からないことは、次の返事を待つ。そう区切ることで、苦情の一言に家で過ごす全ての時間を明け渡さず、必要な対応を続けられます。
よくある質問
騒音の苦情に心当たりがなくても、謝ったほうがよいですか?
まず、いつ、どんな音についての連絡かを確かめます。連絡を受けたことを伝え、確認できた事実には対応し、不明な点は管理会社などを通して確かめられます。分からないまま全てを自分の責任と認める必要はありません。
苦情を言った人へ、直接話しに行くべきですか?
状況によります。管理会社から連絡を受けたなら、まず同じ窓口に確認を返す方法があります。相手を推測して訪ねたり、怒りや恐怖が強いまま当事者同士で話したりせず、必要に応じて第三者を通せます。
子どもの足音を、完全になくさなければいけませんか?
生活の音を全てなくすことはできません。指摘された時間帯や動作を確かめ、できる対策を具体的に相談します。建物の状況や管理規約によっても対応が異なり、子どもに一日中動かないよう求めることだけで解決しようとせず、大人側でできる対応も考えられます。