部下の評価をつけるのがつらい時に。好き嫌いと事実を分ける

評価欄に「主体性が足りない」と書いて、手が止まる。思い出すのは、先週の会議で部下が黙っていた姿です。けれど、これだけで半年分の評価を決めてよいのか。別の部下には、関係が悪くなるのが怖くて、低い点をつけられない。

部下の評価に迷う時は、相手の印象、確認できる仕事の事実、自分の恐れを分けるところから始められます。仏教にも、判断を偏らせる心の動きについての教えがあります。評価表の数字を、そのまま人への好き嫌いにしないために読んでみます。

「やる気がない」を、説明できる行動に戻す

「やる気がない」と書かれた側は、何を直せばよいか分からないかもしれません。評価する側も、その言葉を置いた途端に、確かめる作業を終えた気になることがあります。

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たとえば、期限が決まっていた資料の提出が二日遅れた。それなら、まず提出日と期限を確認できます。途中で依頼内容が変わったのか、本人から相談があったのか、他の業務と重なっていたのかは、別に確かめる情報です。遅れという結果から、意欲や人格まで一度に決めると、途中の事情が抜け落ちます。

人事院が公開する評価者向けガイドは、評価期間の具体的な行動や結果を集め、評価項目に照らす手順を示しています。これは国家公務員向けの資料です。民間企業などで使う場合は、職場の制度を確認するための参考として読み、評語や運用をそのまま移すものではありません。

自分の職場の評価表では、何を、どの期間について見るのか。まず、その欄の説明を読み返します。本人に求めていた役割と、今になって自分が追加した期待が、混ざっていないかも確かめられます。

怒りだけが、判断を曲げるわけではない

パーリ経典の『増支部』4.19は、欲、瞋り、迷い、恐れによって道を外れることを説きます。反対に、それらに左右されずに進むあり方も示しています。古代の教えであり、人事評価の技法を説明した経典ではありません。

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それでも、評価する時の自分を振り返る問いになります。「自分を慕ってほしい」「あの言い返しが許せない」「詳しく知らないが、たぶんこうだ」「低くしたら面談が荒れそうだ」。違う気持ちが、同じ一枚の評価表に入り込みます。

とりわけ恐れは、相手への優しさに見える場合があります。指摘すべき点を曖昧にしたくなった時、部下のために何を考えているのか、自分がどんな反応を避けたいのかを分けてみます。管理職の責任を重く感じる時にも、自分の不安を具体的にすることが次の相談につながります。

一つの印象が、別の欄まで染めていないか

人事院のガイドには、全体的な印象や一つの特徴から他の項目まで同じように見る「ハロー効果」が挙げられています。親しみやすさが仕事の正確さにまで重なったり、一度の失敗から全項目を低く見たりすることです。

採点前のメモを、次のように分けてみる方法があります。これは評価点を自動で決める表ではありません。

今ある材料評価前にすること
日付と内容を確認できる行動どの評価項目に関わるかを見る
自分が受けた印象その印象を支える事実があるか確かめる
他の人から聞いた話必要な範囲で、経緯と内容を確認する
まだ分からないこと不足のまま断定せず、確認先を決める
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目立つ失敗だけを集めると、日々続けていた仕事が消えてしまいます。逆に、「いつも助かっている」という感謝だけでは、どの働きがよかったかを説明できません。良かった点も、改善が必要な点も、できるだけ同じ具体性で見ていきます。

低い評価を伝える前に、支援まで考える

面談で伝えるのは、点数とその理由だけで終わらないほうが、次の行動を相談しやすくなります。期待していた水準、確認した行動、足りなかった部分を説明し、本人からも事情を聞きます。

たとえば「報告が遅い」だけでなく、「先週の案件では、期限を過ぎてから進捗が分かりました。途中で難しさが出た時、どこで共有できそうですか」と話す。ここで本人の理解や、連絡の仕組みに食い違いが見つかることもあります。その場合は、評価に用いた事実を職場の手順に沿って再確認します。

仕事を教えてもらえず困っている人の側から見れば、期待だけを後で示されても動きようがありません。手順の説明が必要なのか、相談の時間が足りなかったのか。評価者が用意できる支援も一つ考えておきます。

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相手がすぐ納得するとは限りません。反論を全部拒む必要も、場を収めるためにその場で点数変更や昇給を約束する必要もありません。確認が必要なことを持ち帰り、誰がいつ返答するかを明確にできます。

迷う項目を、一つ持って相談する

「公平にできる自信がない」とだけ言うより、「この行動をこの欄で見ていますが、根拠は十分でしょうか」と上司や人事担当に相談すると、確かめる対象が共有できます。個人情報や記録は職場の決まりに沿って扱い、関係のない同僚との噂話にしないことも必要です。

評価表を完成させる日は、部下の人間としての価値を決める日ではありません。定められた仕事について、根拠を示し、次の働き方につなぐ日です。「主体性が足りない」の一行へ戻り、説明できることと、まだ聞いていないことを分ける。そこから、書き直せる評語があります。

よくある質問

部下に低い評価をつけると、傷つけてしまいそうです。

低くすること自体を目標にせず、勤務先の基準と、対象期間の具体的な行動や結果を確かめます。理由を説明できるか、見落とした事情がないか、次に必要な支援は何かを整理することが、相手への配慮にもつながります。

苦手な部下を公平に評価できるか心配です。

好き嫌いがあることに気づいたら、評価項目ごとに根拠を確認します。一度の失敗や会話の印象が、別の項目にも入り込んでいないかを見直し、勤務先の手順に沿って上司や人事担当に確認を求められます。

仏教の慈悲から考えると、全員を高く評価すべきですか?

慈悲をそのまま一律の高評価に置き換えることはできません。相手の行動を丁寧に知り、必要な改善点と支援を伝えることも考えられます。仏教の経典は、現代の人事制度の採点方法を定めたものではありません。

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